「信頼している相手だから契約書は不要」「とりあえず業務を始めてから契約書を作ろう」
こうした判断は、後々大きなトラブルを招く可能性があります。

この記事では、契約書がないまま業務を開始した場合のリスクと、実務で取るべき対応策を詳しく解説します。


なぜ契約書が必要なのか?

  • 契約内容を証明するため
    契約は口頭でも成立しますが、証拠がなければ法的に主張するのは困難。
  • トラブルを防ぐため
    業務範囲、報酬、納期などを明確にしないと、認識のズレが発生。
  • 法令対応のため
    フリーランス保護法では、契約内容の明示義務があり、契約書の作成が推奨されています。

図解:契約書がない場合のリスク構造

図:契約書未締結によるトラブルの流れ

契約書なし
↓
業務範囲・報酬条件が曖昧
↓
認識のズレ → 紛争発生
↓
証拠不十分で法的対応困難

契約書がない場合の主なリスク

1. 業務範囲の認識違い

  • 発注者は「A~Zまで」と認識、受託者は「A~Cまで」と認識。
  • 紛争時に証拠がなく、解決困難。

2. 報酬未払い

  • 「報酬は10万円」と口頭で合意しても、支払期日や条件が不明確。
  • 発注者が「完成していない」と主張し、支払いを拒否。

3. 納期遅延

  • 納期が曖昧で、遅延時の責任範囲が不明。

4. 知的財産権の帰属不明

  • 納品後に著作権をめぐる紛争発生。

5. 法的対応が困難

  • 裁判や調停で契約内容を証明できず、請求が認められない。

実務で取るべき対応策

1. 契約書を必ず締結

  • 業務範囲、報酬、納期、権利関係を明記。
  • 電子契約でもOK(クラウドサービス利用推奨)。

2. 契約書が間に合わない場合の暫定対応

  • メールやチャットで業務範囲・報酬・納期を明確化。
  • 「この内容で業務を開始します」と双方が確認。

3. 証拠を残す

  • 業務開始前のやり取りを保存。
  • 納品物や検収の記録も残す。

実務で使える暫定文例(メール)

件名:業務委託の条件確認
本メールにて、以下の条件で業務を開始することを確認します。
・業務内容:〇〇の制作
・報酬:税込55,000円
・納期:2025年11月30日
・納品形式:PDFファイル
ご確認のうえ、返信にて承諾をお願いします。


よくある失敗例と改善策

失敗例問題点改善策
契約書なしで業務開始紛争時に証拠不十分契約書を締結、間に合わない場合はメールで条件確認
業務範囲を曖昧に記載認識のズレで追加請求成果物・仕様・納品形式を具体的に記載

法令対応(フリーランス保護法)

  • 契約内容の明示義務あり。
  • 曖昧な条件で業務を開始すると、行政指導の対象になる可能性あり。

トラブル事例と防止策

事例1:報酬未払い

契約書なしで業務開始、発注者が「完成していない」と主張し支払い拒否。
防止策: 契約書を締結、またはメールで条件確認。

事例2:追加作業の請求

業務範囲が曖昧で、受託者が追加作業を請求。
防止策: 業務範囲を具体的に記載。


実務で使える条文例(契約書)

「甲および乙は、本契約に基づき、業務範囲、報酬、納期、権利関係を明確に定めるものとし、契約書に記載のない事項については、甲乙双方が書面により合意した場合に限り有効とする。」


チェックリスト

  • 契約書を締結しているか
  • 業務範囲・報酬・納期が明確か
  • 証拠を残しているか
  • 法令対応(フリーランス保護法)を満たしているか

まとめ

契約書がないまま業務を開始することは、重大なリスクを伴います。
契約書を必ず締結し、間に合わない場合はメールで条件を確認し、証拠を残すことで、トラブルを防ぎましょう。


次回は、「報酬未払いトラブルの対応方法と予防策」について詳しく解説します。